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睡眠と夢

当ルームに来室される方の多くが睡眠に問題を抱えています。世間では、睡眠障害による痛ましい事故も多く見られるようになりました。睡眠はこころにとっても、身体にとっても大切なものです。

睡眠と心理が結びつくと夢への興味がわいてきます。
私たちは、こころに悩みを抱えた時ほど、夢に何かの意味を見出そうとするのではないでしょうか。

夢は私たちに何を示してくれるのでしょう?

夢とは、私たちに自分の変化やあり方に気づくきっかけを与えてくれるものでしょう。
しかし占いや予言のように、私たちの未来を決定したり暗示したりするものではないはずです。睡眠の間に脳が脳のために調整する過程であって、その表象はいつも気まぐれ。
どうぞその意味をつき詰め過ぎることなく、けれども自分の成長や内面の変化を気づかせるものとして、柔軟に夢とつきあっていく。夢とはそんなつきあい方がいいのではないでしょうか。

睡眠と夢―私たちはいつ夢をみているのか

睡眠とは「脳による脳のための管理技術」」といわれます。睡眠には休息だけではなく、積極的に「脳をつくり、育て、よりよく活動させる」役割があるからなのです。

レム睡眠という言葉をご存知でしょうか?
身体は緊張が抜け、だら~っとした状態だけれども、まぶたの下で眼球が「キョロキョロ」と動いている睡眠です。一方、眼球が動かない睡眠がノンレム睡眠。ノンレム睡眠には1~4段階の深さがあり、3・4段階を深睡眠といいます。
夜寝てから朝起きるまでの間に、このレム睡眠とノンレム睡眠が4~5回周期的に交代して現れます。よく「1.5時間の倍数の睡眠時間をとるのが良い」などと言われるのは、この交代の1周期が80分~100分だからです。しかし、実際にはこれが良いとする証拠はありません。

レム睡眠中は、ノンレム睡眠の入り口である第一段階と似たような脳波を示します。レム睡眠が「浅い眠り」といわれるのはこのためです。この間に大脳を活性化し覚醒を促す役割を担っています。しかし身体の緊張や応答性が著しく低下していることから、必ずしも浅い眠りであるとはいえないのです。

私たちが日常的にみているストーリー性のある夢は、レム睡眠中に現れます。「夢をみたから、熟睡できなかった」と思う人も多いようですが、そうではありません。実は私たちは毎日、レム睡眠の度にいくつかの夢をみているのです。「夢をみなかった」のは覚えていなかっただけのこと。自分の内面や夢に注意が向いていくと、夢を覚えている頻度は上がっていきます。

睡眠が「脳の管理技術」だとして、そこにレム睡眠が不可欠ならば、夢もまた脳にとって必要だから出現するのだということになるでしょう。すなわち夢とは、人間の日々の生活・ストレスを軽減し、癒しや自然治癒力につながるものだと考えられるのです。

※レムとはREM=Rapid eye movement(急速眼球運動)のこと。

夢のはなし―その機能

どうして夢をみるのでしょう。夢にはいったいどんな意味があるのでしょう。
その答えは解明されていません。

「夢は無意識への王道である」とフロイトはいいました。
けれど自分の夢を思いかえしてみれば、無意識らしき領域も多いけれど、現実の自分に近いことも出てくる。夢は無意識だけの表現というよりは、無意識と意識のかかわりを表現しているといえるでしょう。

夢にはいくつかの役割があると考えられています。
フロイトは「夢は願望充足である」と考えました。望んでいることが夢にでる。確かにそういう場合も多そうです。

ユングは「無意識(夢)には意識に対する補償の働きがある」と考えました。「補償」というのは、「意識」の持つ傾向が偏りすぎている場合に、それを修正する働きのことです。たとえば、穏やかで控えめな人が、誰かに感情的に抗議している夢を見たとします。もしかしたらそれは「もう少し自分を主張してもいいんじゃない?感情を出してもいいんじゃない?」という無意識から意識への働きかけなのかもしれないという考え方です。

また「現実直視」という働きもあるといいます。目をそむけている出来事について、「そろそろ現実をちゃんとみなさい!」と夢が意識に働きかけているのです。

ときどき嫌な、怖い夢をみて、不安にかりたてられたりすることがありますよね。
夢は脳にとって、そして人間にとって必要なもの。人間の頭と心を整理し、癒し、育て、活かす役割につながっているはずです。嫌な、怖い夢も、私たちを苦しめるためだけに出てくるのではないでしょう。
自分の中だけで葛藤しないように、現実と向き合うための準備に、感情を抑えつけないように、、、と気づきを与え、私たちのこころを開放し、癒しや自然治癒力につなげようとしているのではないでしょうか。

夢に出てくる物や人

夢はときとして支離滅裂で、無意識からの問いかけをストレートには表現してくれません。ひねくれやさんです。そして、そこに出てくる物や人の意味は、夢をみたその人にしかわかりません。

例えば「薔薇」について、「夢占い」などには「恋の予感」とか「嫉妬心の表れ」と書かれています。その答えがまさに自分の腑に落ちるところなら、それはそれで良いでしょう。
しかし、夢をみたその人にとって「薔薇」が意味する本当のところは、一般化された答えだけではないはずですよね。夢を見た人が男性なのか女性なのか、自然に接している、職業は花屋とか、薔薇の造花を飾っている、薔薇の柄の特別なハンカチがある、など。その意味はそれぞれの認識によって異なるのです。

登場人物についても同様。その人をどうとらえるかによって夢の解釈は異なっていきます。

***
先日の夢に狂言師の野村萬斎さんが出てきました。
萬斎さんは着物を着て背を向けて座っています。
私はその背中に子供のようにブラブラぶらさがっています。
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このとき萬斎さんは、テレビに出てくる「好きな異性」の萬斎さんとして登場したと考えられます。

よくよく思い返したら、CMでの萬斎さんのセリフ「私もうちの子たちも」が私の耳に残っていました。それならば「父親像」の代表として登場した可能性もあります。

萬斎さんが自分の内面を写す鏡だとしたら、自分の中の「男性性」を表しているのかもしれません。

いやいや、そうじゃない。古典演劇の役者さんは中性的な印象もありますよね。そういえば、夢では"うなじ"が強調されていたような。そうなると自分の理想の「女性像」を映しているのかも・・・。

いろいろな可能性を探ってみましょう。

快眠対策でいい夢をみましょう

☆昼寝にちょうどいい時間・・・「お昼を食べると眠くなる?」

実はお昼を食べなくても、人はその時間帯に眠くなるようにできています。人の眠たさの傾向は、夜に一番大きなピークがあり、昼食後の午後2時~4時にも2番目のピークがあるのです。ご飯を食べても食べなくても、この時間帯に眠くなるのが人間の自然なリズムなのです。
15時前に30分未満の昼寝をとると、その後を効率的に活動するために効果的です。しかし長い昼寝や夕方の仮眠は避けましょう。すっきりとした目覚めを得られずさらに眠気が増し、夜の睡眠にも悪い影響を及ぼします。

☆適切な睡眠時間?

睡眠時間5時間程度の短時間睡眠者と9時間以上の長時間睡眠者の眠りの内容を比べると、深睡眠の時間には差がないことが報告されています。これは5時間以上の睡眠をとっていれば、十分な休息は得られているということを示しています。
睡眠時間は長すぎても短すぎてもよくありませんが、適切な時間というのは人それぞれ異なります。一般的に8時間が良いとされますが、万人にとってこれが適切だというわけではありません。日中に眠気で困らず、休日に寝溜めをすることもないようであれば、睡眠不足ではありません。8時間にこだわる必要はないのです。

☆運動・入浴

眠りには様々な環境が関わっています。太陽の光が覚醒を促し、起きている時間の長さが眠りの深さに関係します。そして、体温のリズムも重要です。

人は、深部体温(直腸の温度)が低下すると深い眠りにつき、徐々に上昇して覚醒します。このリズムから考えると、就寝時刻3時間前の運動が効果的であるということがわかっています。運動することで一時的に体温が0.5~1.0℃高まると、一日の体温低下リズムと合わさることで深部体温がこんどは急速に低下し、質の高い睡眠が得られるのです。
入浴でも同様の効果を得ることはできます。しかし入眠までの時間が少ないと、上昇した体温が十分に下がらず、寝付くまでに時間がかかってしまうことがあります。仕事で帰宅が遅くなるなど、就寝までの時間がないときは、ぬるめのお湯につかるなど、温めすぎないようにしましょう。

人は外に熱を発することで体の深部の温度を下げています。「子どもの手足がぽかぽかしてくると眠たいのサイン」というのは、こういうことです。
温めすぎはよくありませんが、手足が冷たいままだとこのような皮膚からの放熱がおこらず、深部の体温が下がらりません。そういった場合には、足浴などで手足をあたためてから就寝するのが良いでしょう。

いい夢をさまたげる刺激

★カフェイン

カフェインには覚醒作用があります。脳の代謝を高めて脳活動を刺激するのですね。頭をすっきりさせたいときには効果のあるカフェインですが、深い睡眠を得たい時には妨害となります。これはよく知られたことですよね。カフェインの効果は4時間以上持続します。

★ニコチン

たばこにも安眠を妨害する作用があることはご存知でしたか?
たばこ(ニコチン)にもカフェイン同様に覚醒作用があります。また、たばこを吸うと血管が収縮します。そして血圧が上昇、心拍数が増加、なかなか眠れないということになるのです。さらにニコチンには、中途覚醒を増加させる作用もあるようです。
体内におけるニコチンの半減期は2時間。就寝前の喫煙は控えましょう。

★アルコール

「眠れないからお酒を飲む」「お酒を飲まないと眠れない」
「眠ること」を目的とした飲酒はおすすめできません。
適量のアルコールは寝入りを早めて、深い睡眠を増加させます。しかしアルコール血中濃度が低下する後半には、眠りが浅くなり中途覚醒が増えるという睡眠内容の悪化を招きます。結果として良い睡眠にはなりません。
さらに、お酒を飲み続けると耐性がつき、催眠作用が低下しますから、酒量が増えるということにつながります。
毎日の飲酒が習慣の方が、もし「お酒を飲まないと眠れない」と思っているとしたら、それは思い込みかも知れません。睡眠までのリラックスを別の方法で得られるように工夫してみると、案外よい眠りが得られるのではないでしょうか。

いい夢をみるための認知療法―刺激制御法

寝る前のリラクゼーションは、昼間のストレスや不安から開放されるために、効果的な方法です。ストレッチ、瞑想、自律訓練法、アロマ・・・などなど

これらと併せて試してみるとよい方法が、不眠症の薬を使わない治療法として考えられた「刺激制御法」です。

人は、歯を磨いたり、読書をしたりなど、それぞれ就寝前に習慣化された一定の儀式を持っています。その儀式にそった動作をすることによって、睡眠へと誘われているのです。
一方、この儀式と関係ない動作は、ときとして入眠に妨害的な働きをします。例えば布団の中で携帯をみる、テレビをみるなど。読書も、ある人にとっては睡眠へ誘う動作であっても、別の人にとっては睡眠を妨げる動作かもしれません。不眠症の方の中には、この一連の動作の中に不眠に結びつくものがあり、それが気づかず習慣化され、不眠が継続している場合もあります。

そこで「刺激制御法」は、"寝床につくと眠くなる"ような習慣づけを行います。この方法では、以下のルールに従って習慣づけを行います。

  1. 眠いときにだけ就寝する(寝床にはいる)
  2. 寝床は睡眠と性行為を行うことだけに使用する
  3. 15~20分を経過しても眠れないときは、寝床を離れ別の部屋に行き、眠くなったときに寝床に戻る
  4. 睡眠時間にかかわらず、起床時刻を一定に保つ
  5. 昼寝をさける

このようなルールは、「寝床につくのは眠るときだけ」という条件付けを行うものです。
前記のように、睡眠時間は必ずしも8時間にこだわる必要はありません。眠れないときは、一度起きて、眠くなったら寝床にもどり、翌朝はいつもどおりの時間に目覚めるようにこころがけます。「いま寝ないと睡眠時間が足りない。なんとか眠らなければ」と布団にしがみついていると、余計に眠れなくなるということもあるのです。

女性特有の眠気と気分

私は月経期間にとても眠気を感じます。女性のみなさんはいかがでしょうか?
月経周期と眠気には関係があります。

女性は、排卵期以降から月経までの間に、女性ホルモンのひとつであるプロゲステロンの分泌量が増加し、体温が上昇します。「黄体期」と呼ばれる期間です。
この期間に身体の不調やイライラなどの心の不調を強く感じるPMS(月経前症候群)になる人もいます。

プロゲステロン自体には催眠作用があります。
さらに、ホルモン変化による体温上昇のために、睡眠の質にも変化がおこります。
月経に近い黄体期の後半になると、夜の体温が十分に低下しないため深い睡眠が得にくくなります。また朝の気温上昇も緩やかになるため、目覚めが悪くなるのです。このような眠気は、月経2~3日でなくなります。

PMSの原因ははっきりしていませんが、ホルモン変化による体調変化に加え、このような睡眠の質の変化も関係しているのではないでしょうか。

男性のみなさん。女性がイライラすることがあるのは、こういった身体の変化のせいもあるのです。どうか多めにみてあげてください。
PMSの女性のみなさんは、この期間に無理をしないようにしましょう。また、PMSのためにイライラが強まっているのだということを自覚しましょう。

自覚するとはどういうことか。
「私はPMSなんだからイライラしても仕方がない。周りが気を使いなさい」と考えることとは違います。こう考えてしまうと、ネガティブな出来事が起こってしまったときに、「なんて周りは気づかいがないのだ!」と腹が立ち、小さな出来事のはずなのに、いつもよりとても悪い状態に感じられてしまいます。

そうではなくて、自分がPMSであることを自覚して、「自分は今イライラしやすい状態にある。だから周囲のことがいつもよりネガティブに感じられてしまうのだ。決していつもより悪い環境ではないし、周囲が気にかけてくれていないっていうことではないのだ」と考えられたら良いと思うのです。そうすれば、落ち込みやすかったり、イライラすることに変わりはなくても、「いつもより悪い状況」とはならないでしょう。

(参考文献)
睡眠と健康/宮崎総一郎,佐藤尚武
夢に迷う脳/J・アラン・ボブソン